某理学療法士の英語論文考察ブログ

当ブログは、理学療法士である私上條が 様々な英語論文を翻訳して、日々の臨床との繋がり等含めて考察しているブログです。 当ブログの内容はご自由にお使いいただいて構いませんが 私の英語力は・・・あっ(察し)といったレベルなので、 元の論文を1度ご確認いただいてからの方が安心かと思います。 (基本的にpubMedでフリーになっている論文です)

消化管の痛みに対する基礎と臨床的視点 その2

Basic and clinical aspects of gastrointestinal pain

2009 Knowles CH, Aziz Q   IF: 5.6

 

前回の続きです。今回は2)消化管侵害受容の分子学的基礎についてです

 

 1)消化管侵害受容の解剖学的基礎(脊髄、迷走神経、腸神経システム) 

 2)消化管侵害受容の分子学的基礎(末梢および中枢のシグナルと感作)

 3)消化管侵害受容の調節的影響(遠心性の神経、自律神経や視床下部―脳下垂体中枢) 

 4)慢性的な説明できない消化器の痛みによって特徴づけられる臨床症状 

   臨床の概要と重要性 

   病理生理学的応用

 5)消化管の慢性痛の治療

 

 

(Naチャネルは1.1〜1.9まであり、それぞれ役目が違います。特に、テトロドトキシン抵抗性NaチャネルはC線維に分布し、疼痛を伝達すると考えられています。テトロドトキシン抵抗性Naチャネルの中で、Na1.5は心筋に、1.8と1.9は末梢神経に分布すると言われています。Nav=Naチャネル)

 

消化管の痛みの分子学的基礎

 特に腸間膜からのぼる脊髄内臓求心性感覚は、消化管侵害受容感覚の主なものとなる。これらの神経は体性の対象物と個体発生や基本的な形態は似ていると考えることに特別な理由はない。痛みの伝達のメカニズムにおいても同様であろう。

 

末梢内臓感覚シグナルと感作

 侵害受容器の終末周辺は、その特性はほとんど同じで、他の一般的な求心性線維では、脱分極刺激に反応したNaチャネルによって発生した活動電位は時間の経過とともに消失し、これらのチャネルの電位型不活性と電位感受性カリウムチャネル伝導が始まる。体性求心性線維では、Nav1.7はテトロドトキシン感受性電流のほとんどを伝達し機械的侵害刺激を変換する決定的なものである。テトロドトキシン抵抗性Naチャネルは優先的に小さくミエリンのない侵害受容性線維に局在しNav1.8およびNav1.9と名付けられている。どちらも特別な生理物理学的な特性をもち、お互いがその機能を補完し、Nav1.9はすべての層の膜の興奮性と、小さな刺激の振幅の増幅に影響をもたらす。Nav1.8の電流はほとんど内臓に分布しているDRGに存在し、一方でNav1.9は内臓のDRGにはほとんど存在しないが、固有ニューロンに存在しその侵害受容における役割はまだ検討の余地がある。

 消化管においては3つのグループがよく特徴づけられている。(1)短潜時レセプターチャネルは最も大きなグループで、聴力や痛みと同様に多様な感覚機能を補助している。消化管に特徴的なものとしては、これらのチャネルの多くは有害な可能性のある食料(辛いもの、メンソール、ガーリック、マスタード、西洋わさび、様々なハーブといった)の多様な味に貢献する。(2)酸感受性イオンチャネル(ASIC 1-3)は電圧に無感覚で、アミロイド感受性の上皮Naチャネルで、pH6-7の範囲で感受性が高まる陽イオンのファミリーに含まれ、まだ議論の余地があるが、管腔酸からの化学的侵害受容と同様に消化管機械受容器の「複雑な形質導入」に直接的な役割を持つ。(3)P2xプリン受容体(P2x1-9)はリガンド開口型の膜陽イオンチャネルで、ATP結合後に開く。これらは機械的感覚と同様に細胞外のpHが低下した際に増加する化学的な刺激の伝達に役立つ。

 

 

末梢感作

 末梢感作は、外傷や炎症といった長期化する刺激によって化学環境内が変化し侵害受容器が低閾値で発火するようになり、刺激反応性侵害受容器の可塑性を形成し痛みの閾値を低下させる。消化管においても同様の機序が発生し、テトロドトキシン抵抗性および感受性の電流の増加と、回復に関わるカリウムチャネルの減少が起こることが報告されている。いくつかの侵害受容感作は、レセプターの繋がりや陽イオンチャネルを変化させることでその効果を修正し、効果の大部分は侵害受容膜上のG-プロテインレセプターとの結合によって引き起こされる。こうしたシグナルのメカニズムはそれから2次的な影響をもたらし、陽イオンチャネルの伝達閾値を低下させる。

 感作はさらに上皮細胞を含む近傍の細胞と炎症細胞の相互作用を増加させうる。肥満細胞やリンパ球との多数の直接的な相互作用は神経炎の基盤となりうる。

 

 

消化管に特徴的な感作のメカニズム

 腸に特別なものとして、さらなる固有消化管関連ニューロンの存在がある。意識にのぼる痛みを直接的に伝達できる訳ではないが、有害な刺激に応答して様々なニューロペプチドを放出し神経性の炎症を発生させることができる。脂肪細胞から放出される生体内アミンに加え、腸内分泌細胞もまた上皮自体に分布し管を直接的に「味わう」ことができる。これらの細胞は粘膜固有層に供給する神経に非常に近く並置しており、底側と外側へ基質を放出することができる。

 

中枢の感覚シグナルと感作

 侵害受容器の中枢の終末はシナプス入力を二次ニューロンへ送り、侵害刺激の持続時間や強さといった情報を送る。体性神経システムでは、グルタミン酸を唯一の送信器として用いた低閾値線維とは異なり、侵害受容器は様々な神経ペプチドを用いて情報伝達やシナプス変換を行なっている。消化管侵害受容器は似たような分子の同一性を持ち、後シナプス膜は内臓痛伝達の役割がある。入ってくる活動電位への応答として前シナプスの変換の観点から、電位作動型のカルシウムチャネルがキーとなる役割をもつ。

 

 

中枢感作

 末梢から繰り返される活動電位の発火は、有害な刺激と無害な刺激(アロディニア)両方に過度な反応を示すようになる。こうした促通は上記の変換要素の前シナプスの放出の増大によってもたらされ、細胞内のカルシウムやカルシウム依存型プロテインキナーゼの活性を増大させる。これは一方でNMDAレセプターのリン酸化をもたらし、続いて起こるグルタミン酸への反応性を増大させる。中枢感作はまた近傍の脊髄神経に対して前述の「サイレント侵害受容器」の漸増と末梢感作の起きた部位の感覚過敏をもたらす。このプロセスにおいて、NMDAレセプターの役割は体性疼痛の伝達と同様であると考えられている。

 似たように、二次的な痛覚過敏は急性および慢性の腹痛によって示されている。加えて内臓内臓(食道の軸方向)と内臓体性(胸壁痛覚過敏)が遠位食道の酸性化モデルによって証明されている。こうした二次的な感作はプロスタグランジンPGE2とNMDAレセプター阻害薬によって防がれたり回復がみられたりすることから、中枢感作は体性神経システムと似たようなメカニズムで起こると考えられる。

 

 

ここまで要約

・消化管侵害受容は体性侵害受容と同様に様々な末梢および中枢の分子メカニズムによってもたらされる。

・末梢感作と中枢感作は両方とも内臓痛のメカニズムとして示されてきた。

・様々な陽イオンチャネル変換器の役割は、化学薬品によって活動が証明され、特に注目を浴びている。

 

 

 

以下、個人的な考察

 

内臓痛においても感作がおこり、内臓痛は体性痛に関連するってことは

慢性的な過敏性腸炎の方とかは、内臓だけでなく何か体性の痛みも出やすくなるってことですかね。

 

痛みの訴えが多い方の中には

よくわからないままメンタルの問題だって言われてきたって方もおりますが

内臓由来の感作が原因だったりもするのかもしれません。

 

内臓系へのアプローチをもっと勉強したいと思う今日この頃です。