某理学療法士の英語論文考察ブログ

当ブログは、理学療法士である私上條が 様々な英語論文を翻訳して、日々の臨床との繋がり等含めて考察しているブログです。 当ブログの内容はご自由にお使いいただいて構いませんが 私の英語力は・・・あっ(察し)といったレベルなので、 元の論文を1度ご確認いただいてからの方が安心かと思います。 (基本的にpubMedでフリーになっている論文です)

消化管の痛みに対する基礎と臨床的視点 その3

Basic and clinical aspects of gastrointestinal pain

2009 Knowles CH, Aziz Q IF: 5.6

 

前回の続きです。今回は3)消化管侵害受容の調節についてです

 

 1)消化管侵害受容の解剖学的基礎(脊髄、迷走神経、腸神経システム) 

 2)消化管侵害受容の分子学的基礎(末梢および中枢のシグナルと感作)

 3)消化管侵害受容の調節(遠心性の神経、自律神経や視床下部―脳下垂体中枢) 

 4)慢性的な説明できない消化器の痛みによって特徴づけられる臨床症状 

   臨床の概要と重要性 

   病理生理学的応用

 5)消化管の慢性痛の治療

 

 

消化管侵害受容器の調節的働き

 痛みは侵害受容神経および神経ではない影響によって調節され、こうした要因は内臓感覚にも影響をもたらす。このことが、よくある「虫のしらせがある」とか「胸がドキドキする」といった言葉の表現につながる。こうした表現にはエビデンスはないが、急性のストレスや心理学的要因にはエビデンスがあり、感情的な合併症は体性疼痛と同様に慢性的な内臓疼痛状態に重要な役割をもつ。ネガティブな感情と不快な内臓感覚とのリンクはヒトにおいてもよく研究されている。例えば、心配・不安が精神的ストレスにより引き起こされた時、腸のガスを増加させ、S状結腸が膨張している際の疼痛を増加させる。加えて、痛みの認識が増加していると、不安は痛み刺激の不快感をさらに増大させる。この後者の効果は、痛みを処理する感情の構成要素と関連した脳の領域の活動を増大させるという報告もある。食道においては、痛みではない感覚がネガティブな感情である際にはより不快に感じることが報告されており、fMRIではネガティブな感情と島や前帯状皮質の活動に高い相関性があることが示されている。他の研究では、不安は下前頭葉、側頭極領域の活動と関連することが報告されている。迷走神経の腸からの感覚フィードバックは辺縁系と傍辺縁系の統合と同様に疼痛の調節を含むホメオスタシスの調整に関連しているため、内臓感覚は深く感情とリンクすることに驚くことはない。辺縁系の活動における体性と内臓間の疼痛の違いは、内臓痛にはより不快な感覚を強く伴うことがfMRIを用いた研究で示されている。

 ストレスに対する器官の応答は、特に視床下部の小領域、扁桃体、中脳水道周囲灰白質の脳構造に組み込まれたネットワークによって生成される。すでに記載したように、これらの構造は内臓感覚と体性感覚や、内側前頭前皮質、前帯状皮質下部領域、島といった皮質構造からの情報を受け取る。このネットワークは脳下垂体や、青斑核、縫線核といった橋延髄の核へ出力し、一方でそれぞれは体への神経内分泌、自律的な出力を調整する。この中枢ストレス循環はこれら脳幹核のモノアミン投射を経由してコントロールされ、特にセロトニン(縫線核)、ノルアドレナリン(青斑核)や循環するグルココルチコイドが関係する。この複雑な脳構造のネットワークはストレス応答を調節し、この主なアウトプットの構造は自律神経系、視床下部―脳下垂体中枢といった下降性脊髄路である。

 

・下降性脊髄路

 上位脊髄中枢からの下降路は内臓刺激の性質によって抑制されたり促通されたりする。皮質レベルにおいては、前帯状回が下降路調節に最も重要な出所となり、扁桃体や中脳水道周辺灰白質へ投射する。中脳水道周辺灰白質は吻側延髄腹内側部や背外側橋被蓋のニューロンを通じて侵害受容伝達をコントロールする。これら2領域は脊髄の後側索を通じて投射し、侵害受容関連ニューロンが集合する脊髄後角ラミナを選択的にターゲットとする。脳幹下部では、ノルアドレナリン作動性青斑核、セロトニン作動性縫線核、吻側外側腹側延髄が扁桃体や中脳水道周辺灰白質からの情報を受け取り、脊髄の後角へと投射する。この情報のほとんどは体性痛から伝達され、これらのエリアの刺激は内臓入力を調節することで鎮痛性の効果をもたらす。

 

・自律神経系

 自律神経系は感情運動システムの核となり、階層的にコントロールされ、ホメオスタシスと感情を双方向的な体―脳インターフェースで体からの入力と運動出力を統合する。これは特に内臓にとってそうであり、加えて神経や内臓神経系は自律神経系にさらに影響をもたらすと考えられている。交感神経系調整メカニズムは様々な慢性疼痛症候群の原因となる。このように、自律神経系は内臓感覚知覚を調整する可能性がある。Iovinoらは、内臓刺激の知覚によって、交感神経活動の増加と副交感神経活動の低下がみられることを発見した。これらの自律神経系の調節は下部体幹の低緊張をもたらし、結果として下肢の静脈のうっ血をもたらす。腸への簡単な膨張刺激は、下部体幹の低緊張の効果から交感神経によって腸のリラクゼーションと、迷走神経によって胃のリラクゼーションがもたらされる。下部体幹の低緊張は腸の膨張の知覚をかなり高めることができる。また、十二指腸の膨張による反射は胃や腸の知覚をかなり高めることができる。これらの発見はこれまでに報告されている交感神経と副交感神経のそれぞれ侵害受容と非侵害受容の活動を支持するものである。

 交感神経と副交感神経システムがいかにして痛みを調節するのかはまだ明らかとなっていない。交感神経の侵害受容に特化した活動としては、カテコラミンやプロスタグランジンを交感神経終末から放出することと関連する。

 

視床下部―脳下垂体―副腎中枢

 アロディニアや痛覚過敏といった中枢神経の感作と考えられているものは、末梢の病理学的な存在なしに存在する。幼少期の出来事は中枢の副腎皮質刺激ホルモンシステムの発達に永久に影響し、一方で行動、感情の表現、自律神経、ストレスに対する内分泌を調節する。齧歯類やヒトではない動物においての実験では、幼少期に母から離すと、副腎皮質刺激ホルモン遺伝子の発現を増加させ、ストレス応答を増大させる。大人になっても、これらの動物は、視床下部―脳下垂体―副腎中枢や交感神経―副腎髄質システム、中枢モノアミンシステムの活動が増大しており、ストレスによって引き起こされる病気に対して非常に弱いことが示されている。これらの研究は消化管に限ったことではないが他の動物実験ではストレスが腸の運動性を低下させ、ヒトにおいても同様の結果がみられる。副腎皮質刺激ホルモンの脳室内または静脈注射によって同等の効果がみられ、副腎皮質刺激ホルモンのアンタゴニスト、αヘリカル副腎皮質刺激ホルモンによってブロックされる。Gueらはストレスと副腎皮質刺激ホルモンの注射どちらもが、直腸の膨張から腹部の痙攣を増大させることから、副腎皮質刺激ホルモンが内臓の知覚過敏をもたらすと報告している。これらの効果はαヘリカル副腎皮質刺激ホルモンによって抑制される。この研究ではまた、末梢へのドキサントラゾール(肥満細胞のスタビライザー)投与はストレスや、副腎皮質刺激ホルモンにより引き起こされた直腸の痛覚過敏から直腸の膨張を抑制することができることを示している。以前の研究ではまた、ストレスと、大腸の肥満細胞の脱顆粒の関連性や、これらの影響は副腎皮質刺激ホルモンの投与によって減少することに着目しているが、いかにして副腎皮質刺激ホルモンが肥満細胞を調節しているのかについてはまだ明らかとなっていない。

 

・ここまでの要約

 感情の状態が消化管の痛みに重大な影響をもたらす

 様々な皮質や皮質下領域が外的ストレスに応答する中枢となる

 内臓知覚と疼痛は3つの主なメカニズムによって影響される:下降性脊髄路、自律神経システム、視床下部―脳下垂体系 である。

 

肥満細胞について

肥満細胞 - Wikipedia

 

 

 

以下、個人的な考察

 

感情と痛みと内臓のリンクについて

昔から言われていますがちゃんとメカニズムがあるんですね。

 

母性と身体のストレスに対する病弱性は幼少期にある程度決まってしまうってことは

なかなか普段の治療で治りにくい人ってのも、幼少期に何かあるのかもしれません

遺伝子レベルでも変化が起こるとは・・・

 

とはいえ遺伝子レベルで変化があったとしても

タンパクの働きは1つがうまくいかなくても、他のタンパクが補ってくれることが多いので

そこをうまく使えるようにやっていければなぁと思います

(具体的にどうしたらいいのかは・・・いい刺激をいれ続けることですかね)