某理学療法士の英語論文考察ブログ

当ブログは、理学療法士である私上條が 様々な英語論文を翻訳して、日々の臨床との繋がり等含めて考察しているブログです。 当ブログの内容はご自由にお使いいただいて構いませんが 私の英語力は・・・あっ(察し)といったレベルなので、 元の論文を1度ご確認いただいてからの方が安心かと思います。 (基本的にpubMedでフリーになっている論文です)

消化管の痛みに対する基礎と臨床的視点 その4

Basic and clinical aspects of gastrointestinal pain

2009 Knowles CH, Aziz Q IF: 5.6

 

今回は4)説明できない消化管の痛みについてです

 

 1)消化管侵害受容の解剖学的基礎(脊髄、迷走神経、腸神経システム) 

 2)消化管侵害受容の分子学的基礎(末梢および中枢のシグナルと感作)

 3)消化管侵害受容の調節(遠心性の神経、自律神経や視床下部―脳下垂体中枢) 

 4)慢性的な説明できない消化器の痛みによって特徴づけられる臨床症状 

   臨床の概要と重要性 

   病理生理学的応用

 5)消化管の慢性痛の治療

 

 

 

説明できない慢性的な消化管の痛みについて

 腹痛は外科や胃腸科医へ紹介されるもっとも頻度の高い原因で、腹部または骨盤内臓が大抵関係している。急性の腹痛は様々なメカニズムによって発生し、臨床においては根底に病理学が存在するという考えを反映している。広く考えると、痛みは内臓のストレッチを原因として発生し、それは炎症や、癌などの神経に対する浸潤や圧迫といった何らかの障害によっておこる。ある意味では、急性の痛みは精神的外傷やオペ、または炎症によって起こるが、これらは特に説明できないような痛みに対しては慢性疼痛よりも問題となることは少ない。慢性疼痛は、慢性状態をひきおこす痛みを含め、慢性の消化管症状のはっきりせず、重なり合う状態と高い関連性を持つ。

 

機能性消化管障害

臨床での概要と重要性

 「過敏性腸症候群」という言葉は、一般人にもよく知られており、40歳以上の大人や小児科まで幅広く、口から肛門まで分類される。器質的な疾患の様々なケースを説明する臨床観察を集めた基礎を用いると、大抵はこのシステム(RomeⅢ:http://neuro-g.umin.jp/neuro-g/publication/5-kai%20PDF/hongo%20lunchon%20semi%200902_25-29low.pdf)を用いて過敏性腸症候群、消化不良、胸焼け、機能的腹痛症候群といった診断がくだされている。痛みがこの過敏性腸症候群の極めて重要な症候である。この消化管疾患の多様性が二次的なコストを生じており、例えば1998年には機能的消化管障害による経済的損失は410億ドルにも登るとされている。機能性消化管障害の痛みに対して、効果的な治療が不足しており、このエリアにおいて臨床的に今だ対処がなされていない。

 

 

応用病態生理学:内臓感作

 これは通常のコンディションでのエビデンスで、消化管は、生理学的感覚を超えた感覚を知覚する源ではない。不快な感覚は、生理学的範囲を超える刺激が加わった際に大抵鋭く、または痛みとして感じられる。この点において、腹痛は内臓の生理学的範囲を超えた膨張により脊髄の腸間膜からの求心性刺激で発生し、一方で虚血性の痛みは腸間膜への血流が受容範囲を下回った際に発生する。潜在的な線維のダメージを認識しうるこうした刺激は、悪性腫瘍や進行性の腸間膜動脈疾患といったいくつかのケースを除き、慢性的であることはまれである。こうした痛みは体性神経生理学的状態とともに自動的に登るため、通常有害ではない刺激(アロディニアと類似)を痛みと知覚したり、痛覚刺激に対する求心性の発火が増大したり(痛覚過敏と類似)といったことが起こりうる。こうした侵害刺激の痛覚過敏は内臓感作といったタイトルでグループ化される。

 

内臓感作には、4つの共通したメカニズムが存在する。

 ・求心性神経感作(末梢感作)

 ・脊髄後角ニューロンの感作(中枢感作)

 ・下降性促通や抑制の変化(神経性、ホルモン性)

 ・認知や感情に伴って非侵害性感覚を侵害性と誤解すること

 

こうしたメカニズムは少なくともある程度は上記の消化管侵害受容における分子やその調節的影響についてまだ議論の余地がある。

皮質の調節もまた重要である。ある研究では、胃腸炎のある患者94名において高い心気症スコアを示し、過敏性腸症候群がよりネガティブな感情や個人的な要因に影響される可能性を示している。似たように、ごく最近のfMRIをもちいた直腸の膨張研究では、過敏性腸症候群のなかでより痛みの報告の多い患者は中帯状回、後帯状回の活動が増大しており、痛みの抑制や覚醒に関わる領域の活動低下が示された。こうした研究では外的なストレス要因や認知や感情のバイアスが末梢の障害と同じくらい消化管の痛みに重要であることを強調している。心臓迷走神経緊張が低下しているような自律神経系の変化が、痛みに対して寛容となることも観察されている。

 

消化管神経筋疾患

応用病態生理学:神経障害性疼痛

 消化管神経筋疾患の痛みに伴うメカニズムには、機能性消化管障害のものとは大きく異なる。体性痛の研究による分類では、内臓感作は侵害受容の痛覚過敏を形成するとみなされる。食後疼痛の報告にも関わらず、内臓感作は消化管神経筋疾患の重要なメカニズムであるという生理学的なエビデンスはほとんどない。

 侵害受容器はもっぱら侵害刺激に対して応答するようデザインされている。細胞体や軸索から生じる活動電位は病理学的には異所的なものである。齧歯類の体性痛の神経損傷モデルでは、異所的な活動は障害された線維のイオンチャネルの変化に応答しているだけでなく、グリアやシュワン細胞といった他のタイプの細胞からもたらされるシグナルが持続的な発火を引き起こす。消化管神経筋疾患におけるひどい痛みの神経病理学的メカニズムは(1)痛みはひどく、標準的な鎮痛治療には応答しない(2)痛みは一部悪化するかもしれないが、腔内刺激には関連しない(3)これらの疾患における腸のニューロパチーには良いエビデンスがある(4)痛みは単なる膨張の結果ではない といった観察によって支持されている。

 ラットにおける腸骨の脱神経は大腸膨張への閾値低下だけでなく、持続的な活動を引き起こす。人においては子宮摘出後に起こる腹部や腸骨の痛みに対し外部除神経が脱感作の生理学的なエビデンスを示す。消化管神経筋疾患においては、末梢や中枢レベルでの持続的な求心性線維の発火が関わることが考えられている。

 

 

ここまで要約

 説明できない腹痛は健康管理に重大な負担となる。

 内臓感作は機能性消化管障害に特徴的な特性と考えられており、よく研究された、いくつかの末梢と中枢の協調したメカニズムをもつ。

 神経障害性疼痛は、特に消化管神経筋疾患において可能性はあるが未踏のメカニズムである。

 

 

以下、個人的な考察

 

結局説明できない痛みはいろいろ可能性があるけど説明できないってことですかね。

 

今回の内容はこちらの論文でうまいことまとめられていました。

http://neuro-g.umin.jp/neuro-g/publication/5-kai%20PDF/9-1_31-33.pdf

 

内臓由来の感作もあり、脳への影響があるってことは

やっぱり内臓の問題がある人は慢性疼痛へ何か影響がありそうです。

 

次回でこのシリーズは最後ですが、来週は研修会のため更新できるかどうか・・・